「AIを使え」と言われたら業務の棚卸しから始めよ~100点の自動化より60点の省力化が正解な理由

2026年3月10日

「AIを使え」と言われたら業務の棚卸しから始めよ~100点の自動化より60点の省力化が正解な理由

経営層から「AIを活用しろ」と号令がかかる。しかし具体的に何をすればいいのか、誰に聞けばいいのか分からない。製造業、物流、バックオフィス業務など、業種を問わず多くの現場でこうした声が急増しています。

DX推進のスローガンに加えて、生成AIの登場以降は「うちもAIを使わないと出遅れる」という焦りが経営層に広がりました。その結果、現場に降りてくるのは「とにかくAIで何かやれ」という抽象的な指示だけです。この記事を読めば、明日から動ける3つの鉄則が分かります。

本記事では、この状況を打開するための3つの鉄則を、WithGrowの支援現場で見えた事例とともに解説します。


AI活用が進まない会社の9割は「ツール選び」から始めている

「AIを使え」という指示が現場で空回りするのは、担当者のやる気や能力の問題ではありません。そこには3つの構造的な原因があります。

1つ目は、方針はあるが具体性がないという問題です。ある中堅メーカーでは、会社として「AIを活用していこう」という方針が掲げられていました。しかし現場の声を聞くと、「ChatGPTやAIカメラが使えそうだ」という漠然としたイメージだけで、どの業務にどう適用するかは白紙の状態でした。

2つ目は、情報システム部門がAI推進の担い手になれないケースが多いことです。多くの企業で情シス部門はPCの管理やネットワーク保守が中心であり、AIの導入や活用を主導する余力も専門性も持ち合わせていません。

3つ目は、「うちの業務にはAIは使えない」という思い込みです。製造現場や物流の業務は、デスクワークのように決まった手順を繰り返す形ではないため、RPAの延長では対応できないのは事実です。しかし、だからといってAIの出番がないわけではありません。

WithGrowがこれまで支援してきた企業を見ると、AI活用が停滞する最大の原因は技術の問題ではなく、「ツールを探すところから始めてしまう」ことにあります。正しい出発点はツール選びではなく、自社の業務の中から「AIが効くポイント」を見つけることです。


「毎日30分ムダにしている作業」を3つ書き出すことから始める~ツールより先に課題を特定する

では「AIが効くポイント」はどうやって見つけるのか。答えはシンプルです。日常業務の中で「時間がかかっている」「判断に迷う」「繰り返している」作業を棚卸しすることから始めます。

ある中堅メーカーでは、技術資料のデータ加工に毎日かなりの時間を割いていました。数値の変換や書式の修正など、手順自体は決まっているのに手作業で行っている定型的な繰り返し業務です。この作業に目をつけた現場の担当者が、生成AIの力を借りて処理の一部を自動化する仕組みを自分で組み始めました。

ここに1つ目の「秘密」があります。AIが効くポイントを最も正確に見つけられるのは、AIの専門家ではなく、毎日その業務に向き合っている当事者自身です。実際にWithGrowの支援が始まると、最初に取り組むのはAIツールの選定ではありません。プロ人材が現場に入り、「いま一番手間がかかっている作業は何か」を一緒に洗い出すところからスタートするケースが多いのです。

棚卸しのコツは、大きなテーマから入らないことです。「全社のAI化」ではなく、「この帳票のこの転記作業」「この検査のこの判定手順」のように、顕微鏡で覗くくらい具体的な粒度で課題を切り出してください。まずは明日の朝、自分の業務の中で「30分以上かかっている定型作業」を3つ書き出すことから始めてみてください。


精度100パーセントを求めると泥沼にハマる~「AIは下準備、人は最終判断」の分業ルール

AIに関心を持った現場が次に直面するのが、完全自動化を目指したときの投資額の壁です。前述のメーカーでも、同様の処理を外部に開発委託した場合の見積額は数百万円に達しました。

多くの企業では、設備投資には大きな金額を出せるのに、ソフトウェアやAIへの投資になると途端に稟議が通りにくくなります。機械は「買えば動く」ことが目に見えますが、AIシステムは「完成形が見えにくい」からです。

ここに2つ目の「秘密」があります。最初から100点を目指さず、「AIは下準備、人は最終判断」という分業から始めると、コストもリスクも劇的に下がります。

たとえば品質検査の場面で、AIに精度100パーセントの最終判定を求めるとプロジェクトは泥沼化します。しかし、まずAIに一次スクリーニングをさせて「要注意品」だけを人が重点的に確認する運用にすれば、導入ハードルは格段に下がります。全体の作業時間を3割削減できれば、現場の負担は確実に軽くなるのです。

これはバックオフィスでも同じことが言えます。請求書の処理や契約書のチェックといった業務でも、AIに最終判断を任せるのではなく、下読みや分類を任せて人が確認するフローにすれば、業種を問わず同じ考え方で導入できます。

重要なのは、最初の一歩で「小さな成果」を出すことです。その成果が次の投資判断を引き出す材料になります。


「こっそりChatGPTを使っている社員」を見つけて社内で発表させる~推進リーダーは採用しなくてもいる

ここまでのステップを踏んでも、組織としてAI活用が定着するかどうかは別の問題です。実は、多くの企業の現場には、すでに個人的にAIを使い始めている人材がいます

ある企業では、生成AIを使った業務効率化に個人的な関心を持つ担当者がいました。しかし全社的なAI方針がないため、その知見は個人の中に閉じたままでした。別の企業では、AI活用検討チームを新設したものの、具体的な方向性が定まらず情報収集だけが続いている状態でした。

ここに3つ目の「秘密」があります。AI活用の推進リーダーは外部から採用しなくても、社内にすでにいる可能性が高いのです。こうした人材を見つけ出し、「小さな成功事例」を社内で発表してもらう場を用意することが、組織的なAI活用の最も確実な起点になります。

業務改善発表会や部門ミーティングで「生成AIでこの作業が半分になった」という具体的な事例を共有するだけで、周囲の認識は大きく変わります。WithGrowの支援先でも、たった1回の社内発表をきっかけに「うちの部署でもやりたい」という声が複数上がったケースがあります。

こうした構造は製造業に限った話ではありません。営業部門やカスタマーサポートでも、個人的にAIを使い始めた社員が孤立しているケースは同じように起きています。

ただし注意すべきは、推進リーダーに「全部やらせない」ことです。関心が高い担当者に全てを背負わせると、その人が異動した瞬間にAI活用も止まります。推進リーダーが示した成功事例を起点に、チームとして再現できる仕組みに落とし込むことが、組織的な定着の条件です。


明日の朝イチで「30分以上かかっている作業」を書き出してみてください

「AIを使え」という漠然とした号令を現場の成果に変えるには、3つの鉄則があります。まず業務の棚卸しで「AIが効く仕事」を特定し、次に100点の自動化ではなく60点の省力化から着手し、最後に社内の先行者を推進リーダーに据えて成功事例を横展開します。

いずれのステップにも共通するのは、現場の業務を知っている人間が起点になるということです。AIの技術に詳しい専門家ではなく、毎日その業務に向き合っている当事者こそが、最も適切な課題を見つけ、最も実効性のある活用法を生み出します。

まずは明日の朝、自分の業務の中で「30分以上かかっている定型作業」を3つ書き出すところから始めてみてください。


WithGrowが提案する「現場発AI活用」の始め方

株式会社CAC identityのWithGrowは、製造業をはじめとする企業の現場が自らの手でDXを推進し、内製化を完遂するための伴走支援パートナーです。AI活用においても、ツールの導入ではなく「課題の特定」と「人材の育成」に軸を置いています。

WithGrowに登録するプロフェッショナル人材には、AI活用や人材育成を専門とする経験豊富なフリーランスが揃っています。まずは無料のフリーディスカッションで、御社の業務にAIがどう使えるかを一緒に整理するところから始められます。ゴールは、外部に頼り続けることではなく、自ら改善し続けられるチームが社内に誕生することです。

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