ツール導入では変わらない理由 ~製造業がまず鍛えるべき課題発見力とDXマインド

2025年12月9日

現場DX人材

DXを推進しようとしても、期待した成果が出ず改善が進まないという相談を多くいただきます。共通しているのは、ITツールの検討やベンダーとの調整に力を入れている一方で、現場が自ら課題を発見し改善案をつくるプロセスが育っていないことです。
DXの本質はデジタル活用に留まらず、現場が自走して課題を発見し、改善を続けられる組織能力をつくることにあります。本記事では、製造業で特につまずきやすい「課題の見つけ方」を中心に、現場主体のDX人材育成について具体例とともに解説します。

まずやるべきは課題発見 ~改善案は現場の手で生まれる

製造現場には数多くの改善の種があります。しかし、そのほとんどは日常の中に埋もれており、意識しなければ見えてきません。DXが停滞する多くの企業では、課題の発見を外部任せにしてしまい、現場が主体的に課題を捉える力が育っていないことが共通しています。

実例|紙の記録をデジタル化したのに作業が増えてしまった工場

ある工場では、紙の検査記録をデジタル化したものの、現場の負担が増え結果的に戻されてしまったことがありました。原因は、

  • 紙の記録にある「メモ欄」の役割を誰も把握していなかった
  • 現場が実際にどの情報を使って判断しているかが整理されていなかった、という点でした。

つまり、現場が課題を捉えられていない状態でデジタル化を進めてしまったことが本質的な問題でした。
DXの起点はツール導入ではなく、課題の発見と改善案の検討です。


現場DXを成功させる三つの思考習慣 ~気づく・俯瞰する・やり切る

課題発見に戸惑う担当者は多く、その理由は「気づくための視点」を持つ機会が少ないためです。
ここでは、現場が自ら課題を見つけるための三つの視点と、それを育てる具体的なアプローチを紹介します。

改善の入口は“なぜ”にある

課題の多くは、日常業務の中に潜む「当たり前」に隠れています。
現状に疑問を持つだけで、見える景色は大きく変わります。

実例|毎朝の在庫確認が30分から10分へ

ある部品メーカーでは、担当者が毎朝の在庫確認に30分以上を費やしていました。
しかし誰もその作業を疑問に思っていませんでした。
原因を調べると以下のような改善余地が見つかりました。

  • 伝票の転記作業が二重になっていた
  • 不良品の棚が現場ごとに設置され、確認箇所が増えていた
  • 必要な項目と不要な項目が混在していた

担当者が「なぜこの作業をしているのか」と問い直したことで改善が進み、作業時間は10分以下になりました。

課題は特別なものではなく、小さな違和感への気づきから生まれます。DXは小さい違和感を大事にすることから始まります。

視座を上げると課題は一気に見える ~全体を見れば改善の“詰まり”が一瞬で分かる

課題を自分の作業レベルだけで捉えてしまうと、改善の本質にたどり着けません。業務のつながりを理解することで、より根本的な課題が見えるようになります。

実例|工程内では問題が無いのに、不良率だけが下がらない理由

ある工場では工程別の作業は最適化されているにもかかわらず、不良率が改善しないという問題がありました。
工程単体ではなく全体を見直したところ、

  • 前工程の作業のばらつきが後工程の手直し量に影響していた
  • 部門間の情報共有に時間差があり、同じミスが繰り返されていた

という構造的な課題が発見されました。

視座を高めることで、局所最適ではなく、全体最適で改善を捉える力が育ちます。

現場が自走する条件は“自分ごと化”にある

DXを推進するのは技術ではなく、人の意識です。自らの業務に責任を持ち、より良くしたいという思いが改善の原動力になります。

実例|作業者から自然に改善案が出る組織に変わった例

一つの工場では、DX推進室が主導していた改善活動が進んでいませんでした。
そこで、現場メンバーに小さな改善テーマを任せるように変更しました。
すると、

  • 作業者自身が不便に感じていた点を整理し共有する
  • 自ら改善案を作成して試す
  • 他の作業者にも意見を求める

という行動が生まれ、改善の質が大きく向上しました。

改善の主体が本当に現場へ移った瞬間でした。
当事者意識が育つほど、改善は無理なく続いていきます。


課題発見力を鍛える3ステップ ~試す・標準化する・見える化する

マインドが整ったうえで、学びを実務に結びつけるステップを設計することが重要です。

成功体験を積むためにあえて小さいDXテーマから始める

大規模なDXテーマを与えるのではなく、手触り感のある小さな課題から始めることで、成功体験が積み上がります。
業務可視化、作業動線の記録、簡易ツール作成など、学んだ視点をすぐ実践できる場をつくります。

外部と協働しながら課題整理の“型”を身につける

外部の専門家とレビューを行い、課題整理の方法や改善案の検討プロセスを標準化することで、属人化を防ぎながら育成が進みます。

役割とスキルを明確にし、成長を見える化する

スキルマップによって、DX人材に求める行動や視点を明確化することで、成長が見える形で蓄積されます。


DX成功の核心は課題発見力にある ~現場が動き出す組織づくり

製造業におけるDXは、ツール導入ではなく、現場が課題を見つけ改善を続ける組織文化を築くことから始まります。
現状への疑問、視座の拡大、当事者意識といったマインドを育てることで、現場は自然と改善を生み出すようになります。
技術はその後に活き、改善を後押しする手段になります。
DXへの第一歩を踏み出すために、まずは、今日の業務で感じた「違和感」を1つ書き出してみましょう。


現場が主役になるDX育成支援 ~伴走型だから定着する

WithGrowでは、製造業の現場が自ら課題を見つけ、改善を続けられる状態をつくるための伴走支援を提供しています。
業務可視化、課題整理、改善案検討、プロトタイプ作成までを現場と共に行い、スキルとマインドが現場に定着するよう支援します。
外部依存から脱却し、現場が主体となってDXを推進できる組織づくりを目指す企業に最適なサービスです。
現場発のDXを確実進めたいご担当者様は、ぜひお問い合わせください。お問合せ・ご相談はこちら